1(1/2)―竜王妃マリエッタ
アーザイリイト竜王国はガリーア大陸のほぼ中央に位置する。
強大な力を持つ竜人が支配するこの国は、ガリーア大陸にひしめく40余りの国々全てを傘下に収めている。
そのアーザイリイト竜王国は今年、建国千年を迎え、国中を上げての祝賀ムードで盛り上がっている。
王宮でも様々な式典や行事が催され、大陸中の全ての国の代表者が招待されていた。
各国の招待客達は、まず王宮の中央に位置する謁見の間に通される。
謁見の間では、その広さ、美しさに圧倒される。
自分達を支配する国の強大さを知らしめられるのだ。
物理的な力であり、経済的な裕福さであり、精神的な余裕を。
そして、贅を尽くされた玉座に座る竜王であるジュライアーツと正妃マリエッタを仰ぎ見る。
ジュライアーツは青年とゆうよりは少年に近い二十代前半の年頃に見える。容姿は非常に整っており、銀の髪は豊かに艶めき、腰まで届いている。銀の星がいくつも入っている紫の瞳は吸い込まれるような神秘的な光を宿している。
座っているため、身長は判らないが、身体つきは華奢とまではいかないが、細い。
一言で表すならば、優しげな風貌だ。
その姿形のみで判断するならば招待客の多くは、ジュライアーツを軽んじるだろうが、誰一人そのような態度を取る者はいない。それどころか平伏し、自分達がいかにアーザイリイト竜王国に忠誠を誓っているかを表す。
長い年月をその傘下に入ってきた国々は、この竜王の恐ろしさが骨身に滲みているのだ。