●美魔女な龍王妃は家出中●

9(1/2) ― 来訪者、再び

う~ん、なんだろう。身体が爽快だ。
ベッドに上半身を起こし、伸びをしながらマリエッタは思う。
そういえば、2日前ジュライアーツを襲った時も体調がよかったような……。
これから毎日襲ってやろうか。

「もう、ダメ。マリちゃん、もう出ないよ……」
昨晩さんざん泣かされたジュライアーツは、自分の隣で可愛らしい寝息を立てている。

「やだわ、アーツったら、人が搾り取ったみたいないい方して」
マリエッタは、寝言をいいながら眉間にしわを寄せる夫の鼻を摘まんでみる。
それでも夫は夢の国からマリエッタの元へは来てくれない。

「しょうがないわね、起きるとしましょうか」
マリエッタはベッドに夫を残したまま、身支度をするため隣の部屋へと移動した。


「で、昨日に続き、なぜ今日もいるのかしら」
当たり前のような顔をして、朝食を食べているアーザイリイト竜王国の宰相にマリエッタは声をかける。

「これはマリエッタ様。おはようございます」
席を立ち、美しい礼をする。

「え、なに。何か問題でも起きた?」
マリエッタはグレンツに座るように促すと、自分も隣へと腰かけた。

「いえ、問題という程のことは起こっておりません。
ただ、今晩開催かれる舞踏会は、国王夫妻主催となっておりますが、マリエッタ様はいかがされますか」
「あっ、そうだった~。舞踏会があったかー。主催夫婦が揃ってないとまずいかー」
長い祝賀会も終わりが見えてきた今、最後の大きな行事といえる。

「んー、一旦帰るか」
「よろしいのですか」
「まあねぇ。毎晩アーツは来ているから、家出の意味はないのよねぇ」
「では、もう王宮に戻られますか?」
「ううん。一旦王宮を出たんだから、もう戻らないつもり」
「そうですか……」
「大丈夫よ、公務は手が離れるまで、ちゃんとやるから」
祝賀行事が終了し、国が落ち着いたら本格的にジュライアーツと距離を置き、公務も引き継ぎをしようとマリエッタは思っていた。


しかし、グレンツは思う。
そんなに簡単にいくだろうか。
マリエッタのことになると、周りが一切見えなくなる竜王の元から離れることなど出来るのだろうかと。