●美魔女な龍王妃は家出中●

13(3/3) ― マリエッタの浮気

※R18表現があります。ご注意ください!

「ひうっ、もう無理。
マリちゃん無理だから。いかせてっ。お願いだから、いかせてぇ」
懇願するジュライアーツの掠れた声は、マリエッタに届いてはいないらしい。

あの後、ソファーに押し倒され、すぐに柔らかいままのジュライアーツ自身を引っ張り出された。
撫でられたり、しゃぶられたりと、散々な目に遭わされているのに、ジュライアーツは1度たりとも、いかせてもらえていない。
マリエッタにせきとめられているのだ。

今もマリエッタはジュライアーツの股の間に居座り、ジュライアーツ自身を熱心に下から上へと舐めている。
しかし、ジュライアーツ自身の根元はマリエッタにしっかりと握られ、どんなにジュライアーツが身悶えようと、いかせてはもらえない。

ジュライアーツは、マリエッタの戒めをどうにかして解きたいのだが『髪のセットに時間が掛かるから乱さないでね』と、言われており、マリエッタに触れるのを躊躇(ためら)ってしまっている。

「ねえアーツ。アーツは私の出身地を憶えている?」
「あぁん、マリちゃん、お願いぃ、いかせてぇ。あっダメェ、そんな所を舐めちゃ、駄目だよぅ」
今マリエッタが何を言おうと、過ぎる快感に身を震わせているジュライアーツには届かない。
マリエッタも分かっているはずだが、それでもいいのか話し続ける。

「ケノン公国のジュサイサ村。私の生まれ故郷よ。
そこに村長の娘がいて、名前は確かティーネって言ったかしら。
年はねぇ、私より下だったわ。
村一番の美人で、そりゃあモテモテだったのよ」
言葉を切ったマリエッタは、夫自身の根元を押さえたまま、先端をチュウと強めに吸う。

「やぁぁっ」
イヤイヤと頭をふるジュライアーツの銀の髪は、紫の瞳から溢れる涙で、幾筋も頬に貼り付いている。

「アーツが見た、さっきの青年はねぇ、ティーネの息子さんなのですって。
ダイアンザイス公の従者として、この国に来ているらしいのよ。凄い偶然だと思わない?
それにね、息子さんは、すでに結婚して子どももいるんですって。
ねえアーツ聞いてる? 子どもよ子ども。
ティーネは“おばあちゃん”になっているのよ。私より年下なのに孫がいるの……」
マリエッタは故郷を懐かしんでいるのか、遠い目をしている。
ジュライアーツ自身をしっかりと握りしめたままなのだが。

結婚して。いや、ジュライアーツが無理やりマリエッタを村から引き離してから、マリエッタが故郷の話をするのは初めてだった。
マリエッタは結婚後、1度たりとも里帰りしたことは無い。
いや、里帰りをすることは許されなかったのだ。
マリエッタは、ジュサイサ村どころか、ケノン公国にすら行ったことはない。

アーザイリイト竜王国の王妃であるマリエッタの出身地は秘されている。
出身地だけではなく、マリエッタの情報は、そのほとんどが隠され、ほんの一握りの関係者しか知らない。

それは仕方のないことと言える。
アーザイリイト竜王国の王妃であるマリエッタの出身地が知られれば、マリエッタの両親や兄弟、親戚、村で仲の良かった者達、その全ての命が脅かされることになるからだ。
マリエッタを脅かすネタになるのだから。

アーザイリイト竜王国は大国で、力も財力も他の国より段違いに大きい。
マリエッタの出身地の者達を守ることは容易いことかもしれない。
しかし、どこまで守ればいいのか、いつまで守ればいいのかは誰も判らない。

両親、兄弟の家族までなのか、従兄や又従兄の親戚までなのか。
それとも仲の良かった村人全てなのか。
ジュサイサ村の出身者というだけで、マリエッタの弱みになるかもしれない。

マリエッタの人間として生活していた時のことは、全て隠されることとなった。
それは、マリエッタがアーザイリイト竜王国の王妃になったことを、誰にも知らせないことでもある。
知ってしまったら隠し続けるのは難しい。情報は瞬く間に広がってしまうだろう。

ある日いなくなった娘は、村を通りかかった貴族に見初められ、妾として召し上げられたのだと両親には伝えられた。
それと共に、貴族からだと多額の金銭が支払われた。
それこそ、一生かかっても使えきれない程の金額だ。

両親にしてみれば、娘を売り渡したことになるのだが、アーザイリイト竜王国に出来ることは他になかった。
マリエッタの両親は、一目娘に会わせてくれと使者に食い下がったが、丁寧だが断固とした対応に、どうすることも出来なかった。
2度と娘に会うことは叶わなかったのだった。

昼ごろに王宮の庭であった青年は、故郷の村人の特徴を持っていた。
『わら色の金髪と水色の瞳』
懐かしさに思わず話しかけてしまったが、話しかけられた青年は、召使である自分に、気さくに話しかけてくる竜王妃が、自分の母親の知り合いだったとは、思いもしなかっただろう。
主人であるダイアンザイス公ですら気づいていないはずだ。


「ねえアーツ、聞いているの?
孫よ、孫。孫がいるのよ、そんな歳なのよ……。
私、いつの間にか、おばあちゃんの年代になっていたのよ」
マリエッタは今まで、夫どころか誰にも言ったことはなかったが、子どもが欲しかった。

竜人はもともと長寿のせいか、子どもが出来にくい。
ましてやジュライアーツとマリエッタは竜人と人間、種族が違う。異種間で子どもが出来たとは今迄聞いたことが無い。
それでも……。
いつかは子どもを授かれるのではないかと願っていたのだ。

竜人と共に生活していたマリエッタは“時”の違う者達との生活の中、自分が子どもを産める年齢を、すでに通り越していたことに、気付いていなかった。
ティーネの息子に会って分かったのだ。
一縷の望みすら無いことを突きつけられてしまったのだ。

ジュライアーツは200歳を越えてはいるが、まだ若い。子どもをまだ望むことができる。
自分と一緒にいなければ……。

「解放してあげるわ」
涙で濡れたジュライアーツの頬をそっと撫でると、マリエッタはジュライアーツ自身の戒めを解く。
ただただ解放を求めていたジュライアーツは、すぐに白濁でマリエッタの手を濡らしてしまうのだった。