20 ― 運命の少女
「ああよかった、マリちゃんが良くなって」
目が覚めたマリエッタの隣にスルスルと竜王が入ってくる。
「アーツ眠いの?」
勝手に人の布団の中に入って来て、マリエッタと同じ枕に頭を乗せる。
自分の私室に寝かされていたから、ベッドは広い。ついでに枕も大きい。
だからと言って、わざわざ同じ枕を使わなくても、とマリエッタは思う。
まあ、ここでジュライアーツを押しのければ、長い間イジケて面倒くさいから、やらないけど。
倒れたマリエッタのことを余程心配していたのだろう。
嬉しそうにニコニコと微笑んでいる。
ジュライアーツを見ていると、また胸がザワザワと落ち着かなくなってくる。
あの少女のことを思い出して。
自分が倒れたことで、ジュライアーツは、あの少女と、どうこうすることは出来なかっただろうが、これからどうなるのだろうか。
「僕ねぇ、あれを見てマリちゃんの気分が悪くなったのかと思っちゃった」
「あれ?」
「そうだよ。あのサザンだったっけ。あいつが連れていたヤツ」
マリエッタの心臓がドクリと大きく波打つ。
しかめっ面をしてみせるジュライアーツだが、マリエッタには、その表情はわざと作られたもののように思えた。
自分が少女を気にしていることを、マリエッタに気づかせないために。
マリエッタが自分と少女の特別な何かに気づいたのではと、伺う為に。
「綺麗な方だったわね……」
こちらに身体ごと向いているジュライアーツの顔を見ないように、自分は上を向いたまま。
自分からジュライアーツの元を去るとか、手を離すとか、強気なことを言っていたくせに、いざその時になると、これほどの恐怖が襲うのか。マリエッタは布団で見えない両手をぎゅっと握りしめる。
ジュライアーツにしてみれば簡単なことだ。
本物の番が見つかったのならば、仮の番は廃棄すればいい……。
竜人とは、そういうものだ。
本能で番を求める。
本能ならば“しかたがない”
「えー、綺麗なんかじゃないよ」
ジュライアーツは、しかめっ面のままだ。
26年。人間にしたら長い年月だ。
だが、竜人にしたら、ほんの一瞬。
マリエッタと共に過ごした期間は、ほんの一瞬。
マリエッタの瞳の奥に熱い物が込み上げてくる。
ダメ。
泣いて憐れみを乞うような真似はしたくない。
ジュライアーツは優しい。
仮とはいえ、自分の妃としていた人間が縋り付いてきたら、困ってしまうだろう。
マリエッタは涙を隠すために、夫の肩に額を付ける。
「ウフフフ」
マリエッタが自分に抱き着いて来たと思ったジュライアーツは、嬉しそうにマリエッタの背に手を回す。
慣れ親しんだジュライアーツの匂いに、心が落ち着いてくる。
それとともに、違う感覚がマリエッタの中に湧いてくる。
「え、え、え。マ、マリちゃん。何して……。あんっ、やぁん。
だめ、駄目だよ。
マリちゃんは、さっき倒れたばっかりでぇ……。あああん」
せっかく抱き着いたのだから、夫を堪能しよう。
マリエッタの手は夫の至る所をまさぐりだす。
もしかしたら、最後かもしれないのだ。
じっくり、たっぷり、気が済むまで、とことん堪能しなくては。
「だめ、だめぇ……。あん」
マリエッタの手の動きに身を捩る竜王。
元から遠慮なんてものは無いマリエッタの動きは、段々大きくなってくる。
「メンドクサイ服を着ているわね」
マリエッタが倒れて、それにつきっきりだったジュライアーツの服は、礼服のままだ。
マリエッタを心配して、着替えることなど、考えも浮かばなかったのだから。
素肌に行きつくまで、何枚もはだけなければならない。
ボタンが千切れる勢いで、ジュライアーツの服を脱がせていく。
マリエッタは、ドレスを脱がされ、入院着のような物を着せられていたから好都合だ。
やっと現れたジュライアーツの乳頭に強く吸いつく。
「ひうっ」
ジュライアーツは、大きく背をしならせ、結果マリエッタにそれを差し出すことになる。
マリエッタの手はその間も動き回り、ジュライアーツの下肢へと進む。
「だめっ、ダメだよマリちゃん。これ以上やったら、僕、止められなくなっちゃう。ダメだよぅ」
「やめる気ないから大丈夫」
マリエッタは、夫自身を取り出すと、両手で握り込む。
すでに反応して、固くなりつつある夫自身を強弱つけて、上下にさすっていく。
すぐに先走りでマリエッタの手は濡れていく。
咥えるのもいいけど、すぐに迎え入れてもいいわね。
夫自身の先端をグリグリと抉(くじ)りながらマリエッタは考える。
「あ、あああん。
マ、マリちゃん。キスして。マリちゃんキスしてぇ」
ジュライアーツが震える両手をマリエッタに縋り付くように回してくる。
落ちたな。
マリエッタはニヤリと嗤うと、夫に唇を寄せていく。