7 ― ピンチです(R15くらい?)
※ 無理やりなところがあります。
苦手な方はご注意ください。
すごくいい夢を見ていました。
とてもいい夢です。
だから起きたくありません。このままいい夢の続きを見ていたいのです。
なのに違和感があります。身体の違和感がだんだん大きくなっていき、私の眠りを妨げるのです。
なんだか直接肌を触られている様な、お腹やわき腹をサワサワと……。
「ぎゃあーっ。」
いきなり胸にっ、平均よりやや控えめな胸に違和感がっ!
いっきに覚醒して、がっと目を見開くと……。
王太子殿下――――っ!!
薄暗い部屋の中、王太子殿下が私に覆いかぶさっていらっしゃいました。
「なっ、なっ、なにごとーーーっ!」
いやいや有りえないしっ、一体全体なにがどうしてこうなった!?
なぜ寝室に王太子殿下がいるの?
なぜ王太子殿下は私に覆いかぶさっているの?
なぜ王太子殿下の手が私の夜着の中に入っているの?
てか、胸を掴んでるーーーっ!!
「おっ、王太子殿下っ!離してっ、手を、手をどかして下さいっ」
「エルリーナ、私のことは“タロ”と呼べ」
「へ? タロ?」
「そうだ、タロだ」
薄暗い中でも王太子殿下のご尊顔はよく見えます。とても真剣な顔です。真剣な顔で私に覆いかぶさっています。
その上変なことをおっしゃっています。
さて、ここで確認です。
ここは私が通された、いわば私の寝室です。
現在時刻は真夜中と思われます。
部屋の中は薄暗く、王太子殿下が持ってこられたと思われる手燭の蝋燭(ロウソク)のみの明かりです。
私の夜着は前面がほとんど機能しておりません。すっぽんぽんに近いです。
掛け布団は行方不明です。
上を向いて寝ている私の股の間にいるのは王太子殿下です。
王太子殿下は私に覆いかぶさるような態勢です。
片手は私の脇に付き、もう片方の手は、あろうことか私の胸をがっつり包み込んでいます。
上記の状態を鑑みると……。
私ってば貞操の危機ーーーっ!!
一大事です!
王太子殿下の謎のタロ発言など気に留める暇はありません。
やばいです!
貴族の未婚者への貞操観念は厳しいものがあります。
純潔でなければ真っ当な所へお嫁にはいけないのです。
この歳でどこぞのジジイ貴族の後妻とかはまっぴらごめんです。
この危機を乗り越えなければ、私の将来は暗澹たるものになってしまいます。
「どいてっ、どいてっ、離してっ、はなしてーっ」
ありったけの力を込めて全身で抗います。しかし、王太子殿下に有利な体勢を先にがっつり取られているので、ほぼ動けません。
「エルリーナ」
王太子殿下の唇が私へと迫ってきます。これは何ですか? キスの態勢ってことですか?
私のファーストキスが~。
前世ではキスどころか、男性とお付き合いひとつしたことがない清らかな私なのにぃー。
もちろん今生でもありませんよっ。
やーめーてー。
私の渾身の抵抗はそれは見事に打ち砕かれました。
ええ、無駄な抵抗でした。
王太子殿下の唇が私の唇を覆います。私は全身で抗っていたので、結構息が上がっています。息ができません。
苦情を言おうと口を開けたところに、王太子殿下の舌がするりと入り込んできました。
歯列をなぞり、舌を絡め取られ、吸われ、唾液があふれ出します。
だから息ができませんってば。
貞操の危機から命の危機です。
身を捩り、王太子殿下の胸を渾身の力で叩き、抵抗を繰り返していましたが、目の前が暗くなっていきました。
もうだめ……。
力が抜けようとした時、唇が離れ、空気が肺に大量に入ってきます。
「げほっ、げほっ、げほっ……」
息を吸ってー。吐いてー。
呼吸をすることだけに気を取られていた隙に王太子殿下の手が一番よからぬところに伸びてきていました。
内股を撫でられ、指がするりと女性器をなぞります。
「いやっ!!」
身を捩ります。ですが圧倒的な力の差になすすべもありません。
でも、こんなこと嫌です。どうしたって諦めきれません。
力が底を尽きそうですが、それでも抵抗はやめません。絶望的な思いで王太子殿下を見ます。
そして、その瞳に全ての動きがとまります。
その瞳を知っています。
私は知っているのです。
王太子殿下の碧い瞳を。
なぜでしょう。知っているのは碧い瞳ではないのに。でもこの瞳です。
王太子殿下が私を見る、この瞳を知っているのです。
いつこの瞳を見たのでしょう?
思い出せないけれど、私はこの瞳を知っているのです。
この瞳を前に、私の全身から力が抜けてしまいました。
私は抵抗することが出来なくなってしまったのでした。